AIを使ったサイバー攻撃が日本企業のホームページを狙い始めた。中小企業が今すぐ見直したいWebサイトの守り方

AIを使ったサイバー攻撃が日本企業のホームページを狙い始めた。中小企業が今すぐ見直したいWebサイトの守り方

この記事を約4分で解説

音声:VOICEVOX:ずんだもん

2026年10月、AIを使ったサイバー攻撃が、日本企業のWebサイトに向けて実際に行われていることが、セキュリティ会社から相次いで報告されました。

  • GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、日本企業を狙った不正アクセスの攻撃元を調べたところ、AIが自動で侵入を試みるツール「ARTEX(アーテックス)」が使われていたと発表しました
  • クラウド型WAF「Scutum(スキュータム)」を提供するビットフォレストの技術ブログは、AIエージェントが国内企業のWebサイトに対して、スキャン、ログインの総当たり、問い合わせフォームへの連続投稿などを行っていた様子を報告しました

同じ時期、IPA(情報処理推進機構)も、不正アクセスによる情報漏えいが相次いでいるとして、企業に速やかな点検を呼びかけています。

「AIの攻撃なんて、大企業の話でしょう」と思われるかもしれません。しかし、AIを使うと、攻撃者は少ない手間で、たくさんのサイトを、休まず調べられるようになります。小さな会社のホームページも、「たまたま見つかった弱いサイト」として狙われる可能性が高まっています。

この記事では、ホームページを持つ小さな会社の経営者・担当者に向けて、何が変わったのか、どこが狙われるのか、何から守ればいいのかを整理します。

この記事は2026年10月26日時点の公開情報をもとに作成しています。各社の調査は続いており、内容が更新される可能性があります。最新情報は記事末尾の参考情報(各社・各機関の発表など)もあわせてご確認ください。

まず結論:やること

  1. ホームページのCMS(WordPressなど)・プラグイン・テーマを最新版に更新する。サーバーのPHPなども含めて確認する
  2. 管理画面のログインに2段階認証を設定し、パスワードの使い回しをやめる
  3. 管理画面に入れる場所(IPアドレスなど)を制限する。少なくとも、ログインの試行回数に上限を設ける
  4. 問い合わせフォームにボット対策(Cloudflare TurnstileやreCAPTCHAなど)を入れる
  5. 使っていないサイト・プラグイン・アカウントを削除する
  6. バックアップがサーバーとは別の場所にあり、実際に戻せるかを確認する
  7. WAFを入れていても更新は後回しにしない。ログを見られる人と、異常に気づく仕組みを決める
  8. 制作会社・保守会社との保守契約の範囲と、事故のときの連絡先を確認しておく

「うちのホームページ、最後にいつ更新したか分からない」「制作会社と連絡が取れない」という方へ
C-TechLabでは、WordPressなどのホームページの更新状況の確認から、管理画面の守りの強化、フォームのボット対策、継続的な保守まで対応しています。初回のご相談は無料です。

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2026年10月に報告されたこと

10月に公表された主な情報を、発表元ごとに整理します。

日付発表元内容
10月9日IPA国内で不正アクセスによる情報漏えいの公表が相次いでいるとして、速やかに行う点検と対策をまとめた注意喚起を公開
10月14日ビットフォレスト(Scutumの技術ブログ)10日夜〜14日に、AIエージェントによる国内企業のWebサイトへの攻撃を、少なくとも3つのIPアドレスから確認
10月14日・19日GMOサイバーセキュリティ byイエラエ調査した不正アクセスでAIが使われた可能性が高いと推察。19日には、攻撃元でAIの自律型ペネトレーションテストツール「ARTEX」の使用を確認したと発表

IPA:外部に公開しているサービスとアカウントが入口に

IPAの注意喚起によると、狙われた製品やサービスの特定の弱点は、現時点では断定されていません。ただ、公表された事例の傾向から、外部に公開しているアプリケーションやサービスへの侵入と、アカウントの乗っ取りが起点になっているとみられています。

そのうえで、次のような点検を速やかに行うよう求めています。

  • 自社で作って公開しているWebサービスについて、直近のログに異常がないか(まず直近1か月、次に3か月)を確認する
  • 構成するソフトに適用していない修正(パッチ)がないかを確認し、あれば速やかに適用する
  • クラウドやVPNなどを含め、使っている外部サービスを洗い出し、ログイン失敗の量やログイン元、身に覚えのないアカウントがないかを確認する
  • 異常が見つかったら、セキュリティ事故として対応を始め、専門の会社に詳しい調査を依頼する
  • 不要な情報は持たないという原則で、保有するデータを最小限にする

イエラエ:AIの侵入ツール「ARTEX」が日本企業を標的に

ITmedia AI+やScanNetSecurityの報道によると、イエラエは、日本企業を狙った攻撃の元になっていたサーバー(攻撃インフラ)を調べ、ARTEXが使われていたことを確認したとしています。

ARTEXは、本来はセキュリティの検査(ペネトレーションテスト)をAIが自動で行うためのツールです。米CrowdStrikeは10月7日のブログで、ARTEXを中国で開発されたオープンソースのツールと説明し、韓国の金融機関を狙った攻撃で使われたと報告しています。CrowdStrikeは、AIを使うことで、1人の攻撃者が短い期間に複数の侵入を行えていたと分析しています。

報道で伝えられているイエラエの調査結果は、次のとおりです。

  • 調べた攻撃元のサーバーは、観測できた範囲ではほぼ日本だけを標的にしていた
  • 標的は約20社で、うち9社は同じ業種のサイトだった
  • 日本企業だけを狙う、AIを使った攻撃インフラをさらに6台見つけた
  • 標的となった企業のうち8社が、9〜10月に情報漏えいを公表していた

なお、約20社すべてが被害を受けたと確認されたわけではありません。イエラエは、これらの情報を法執行機関に共有したとしています。

ビットフォレスト:AIエージェントがスキャンからフォーム連投まで

ビットフォレストは、攻撃しているのがAIエージェントかどうかを見分ける仕組みをWAFに組み込み、国内企業のWebサイトへの攻撃を観測しました。少なくとも3つのIPアドレスから、次のような攻撃が確認されています。

攻撃元規模(約)主な内容
1つ目1,000件管理画面や設定ファイル(.git など)があるかを調べる大量のスキャンのみ
2つ目1,440件段階的なスキャン、SQLインジェクション(データベースを不正に操作する攻撃)、問い合わせフォームへの自動投稿(約210件)
3つ目12,450件8時間弱にわたり10段階で手口を変えた。毎秒約35件・約1万件の高速スキャン、既知の弱点への攻撃、ログイン画面への総当たり(約250件) など

特徴は、AIエージェントがサーバーの反応を読み取りながら、次の手を変えていく点です。決まった攻撃を繰り返すだけの従来のツールとは、動き方が違います。同社は、今後はほぼすべての攻撃者がAIエージェントを使うようになると推測しています。

何が変わったのか

攻撃にかかる手間とコストが下がった

これまで、サイトを調べ、弱点を見つけ、手口を切り替えながら侵入するには、ある程度の技術と時間が必要でした。AIエージェントは、この作業の多くを自動で、しかも状況に合わせてこなします。

攻撃者にとって手間が減るということは、「わざわざ狙うほどではなかった小さなサイト」まで、ついでに調べられるということです。攻撃者は会社の規模ではなく、入りやすいかどうかで相手を選びます。

それでも、狙われる入口は昔と同じ

一方で、ビットフォレストはAIが使われていても、基本的な対策は大きく変わらないとしています。AIは新しい魔法の入口を作るわけではなく、昔からある弱点を、速く、しつこく探すのが得意なのです。

小さな会社のホームページで狙われやすい入口

報告された攻撃の内容と、IPAの注意喚起をもとに、小さな会社のホームページで特に注意したい入口をまとめます。

入口よくある状態起きうること
古いCMS・プラグイン・テーマ制作後に一度も更新していない公開済みの弱点を突かれ、サイトを改ざんされる・情報を抜かれる
管理画面のログイン/wp-admin/ などに誰でもアクセスでき、パスワードだけで入れる総当たりや、漏れたパスワードで乗っ取られる
弱い・使い回しのパスワード「会社名+数字」、複数のサービスで同じパスワード他社から漏れた情報で、そのままログインされる
問い合わせフォームボット対策がない大量の迷惑投稿、自動返信メールの悪用、入力欄を使った攻撃
公開されたままの管理画面・ファイルテスト用ページ、バックアップファイル、.git などの設定ファイル設定やパスワード、ソースコードを読まれる
放置されたサイトキャンペーンサイトや旧サイトがサーバーに残っている誰も更新しないため、侵入の足がかりになる
サーバー・VPN機器PHPやサーバーOS、VPN装置の更新が止まっている既知の弱点を突かれ、社内まで入られる

WordPressで作ったホームページの具体的な危険と対策は、「WordPressのセキュリティリスク」でも詳しく解説しています。

「WAFがあるから大丈夫」ではない理由

WAF(ワフ、Webアプリケーションファイアウォール)は、Webサイトへの怪しい通信を見つけて止める仕組みです。導入しておく価値は十分にありますが、WAFだけに頼るのは危険です。

ITmedia AI+の報道によると、イエラエは10月14日のブログで、今回の攻撃ではWAFをすり抜ける複数の技術が使われていたと説明しています。例えば、「1つのIPアドレスから短時間に多くの通信が来たら止める」というルールに対して、止められる直前で別のIPアドレスに切り替えて攻撃を続け、合計で数百のIPアドレスが使われたとされています。

同社は、WAFを入れているからパッチを当てなくてよい、後回しにしてよいと考えている人は要注意だと警告しています。また、次のような点も指摘しています。

  • 脆弱性の情報(CVE)に書かれたバージョン以外も影響を受けることがあり、サポートが終わったバージョンには修正も情報も出ない
  • 外から見ただけでは、サイトのソフトのバージョンを特定しにくく、対策漏れに気づきにくい

ビットフォレストも、まず脆弱性をなくしておくことを基本とし、そのうえで既知のパターンだけに頼らないWAFを使うことを勧めています。つまり、WAFは「更新」の代わりではなく、更新したうえで重ねる守りと考えてください。

優先度順:小さな会社のホームページ防御チェックリスト

一度に全部やる必要はありません。効果が大きく、費用がかかりにくいものから順に並べています。

優先度対策ポイント
高CMS・プラグイン・テーマ・PHPの更新自動更新の設定も検討。サポートが終わったバージョンは移行を計画する
高管理画面の2段階認証管理者アカウントはすべて。共有アカウントは個人ごとに分ける
高パスワードの見直し長く、使い回さない。パスワード管理ツールの利用がおすすめ
高使っていないサイト・プラグイン・アカウントの削除停止しているだけのプラグインも削除する。退職者のアカウントも確認
中管理画面へのアクセス制限社内のIPアドレスからだけ入れるようにする、ログイン試行回数に上限を設ける
中問い合わせフォームのボット対策Cloudflare TurnstileやreCAPTCHAなどを導入し、送信回数の制限も検討
中バックアップサーバーとは別の場所に保存し、戻せるかを試しておく
中WAFの導入・見直しレンタルサーバーやCDNのWAFを有効にする。入れたら終わりにしない
中ログの確認と監視ログイン失敗の急増、身に覚えのない管理者、改ざんに気づける仕組みを作る
継続保守契約と連絡体制誰が更新し、誰がログを見て、事故のときに誰に連絡するかを決める

担当者向け:今週中に確認したいこと

ここからは、ホームページを管理している担当者や、保守を任されている方向けの内容です。

1. 更新が必要なものを洗い出す

WordPressの場合は、管理画面の「ダッシュボード → 更新」で、本体・プラグイン・テーマの更新の有無を確認します。あわせて、「ツール → サイトヘルス」でPHPのバージョンも確認しましょう。サーバーにSSHで入れる場合は、WP-CLIでもまとめて確認できます。

wp core version
wp plugin list --update=available
wp theme list --update=available
php -v

更新の前には、必ずバックアップを取ってください。

2. 管理者アカウントを棚卸しする

wp user list --role=administrator --fields=ID,user_login,user_email,user_registered

知らないアカウント、退職者のアカウント、共有のアカウントがないか確認し、不要なものは削除します。残すアカウントには2段階認証を設定します。

3. ログイン失敗やフォームへの大量アクセスがないか、ログを見る

IPAの注意喚起では、まず直近1か月、続けて3か月とさかのぼって確認することが案内されています。レンタルサーバーの管理画面などからアクセスログを取得し、次のような点を確認します。

# ログイン画面へのPOSTが多いIPアドレスを数える(WordPressの例)
grep "POST /wp-login.php" access.log | awk '{print $1}' | sort | uniq -c | sort -rn | head

# 問い合わせフォームへのPOSTが多いIPアドレスを数える(URLは自社のものに置き換える)
grep "POST /contact/" access.log | awk '{print $1}' | sort | uniq -c | sort -rn | head

1つのIPアドレスからの件数が少なくても、同じ時間帯に多くのIPアドレスからまとまって来ている場合は注意が必要です。今回のように、攻撃者はIPアドレスを切り替えながら攻撃します。

4. 公開してはいけないファイルが見えていないか確認する

ブラウザで、自社サイトの /.git/、/.env、/backup/ などにアクセスし、中身が表示されないか確認します。テスト用のページや古いサイトがサーバーに残っていれば、削除するか、公開をやめます。

5. ログイン画面とフォームの守りを強化する

  • 管理画面に、IPアドレスでの制限や、ログイン試行回数の制限をかける(レンタルサーバーの機能や、セキュリティ用のプラグインで設定できることが多い)
  • 問い合わせフォームに、Cloudflare TurnstileやreCAPTCHAを導入する。フォームの自動返信メールが、迷惑メールの送信に悪用されないかも確認する

6. 異常を見つけたときの動き方を決めておく

IPAは、異常なログや身に覚えのないアカウントが見つかった場合は、速やかにセキュリティ事故として判断して対応を進め、専門の会社への調査依頼を検討するよう案内しています。慌てて消してしまうと調査ができなくなるため、ログやファイルは消さずに保存し、決めておいた連絡先に相談してください。

制作会社・保守会社との関係も見直す

小さな会社のホームページは、制作会社に作ってもらったまま、誰も更新していないことがよくあります。今回のような攻撃に備えるには、次の点を確認しておきましょう。

  • 保守契約があるか、ある場合はどこまでが範囲か(CMSの更新、プラグインの更新、サーバーの更新、バックアップ、ログの確認など)
  • 事故が起きたとき、誰に、どうやって連絡すればいいか(夜間・休日も含めて)
  • サーバーやドメイン、管理画面のログイン情報を自社でも把握しているか

個人情報の漏えい(そのおそれを含む)が起きた場合は、個人情報保護委員会への報告が必要になることがあります。事故のときの連絡先の整理や、委託先・クラウドの棚卸しについては、「委託先・クラウド経由の情報漏えいが相次いだ2026年10月。中小企業が今すぐ見直すこと」もあわせてご覧ください。

C-TechLabにできること

C-TechLabでは、小さな会社のホームページの保守・運用を、ホームページ保守としてお引き受けしています。

  • 現状の確認:CMS・プラグイン・PHPのバージョン、管理者アカウント、公開されたままのファイルなどを確認し、優先して直すべき点をお伝えします
  • 更新作業:バックアップを取ったうえで、WordPressなどの本体・プラグイン・テーマ・PHPを更新します
  • 管理画面とフォームの守りの強化:2段階認証、アクセス制限、ログイン試行回数の制限、Cloudflare TurnstileやreCAPTCHAの導入を行います
  • WAF・バックアップ・監視の設定:お使いのサーバーに合わせて、WAFの有効化、別の場所へのバックアップ、異常に気づくための仕組みを整えます
  • ほかの会社が作ったサイトの引き継ぎ:制作会社と連絡が取れなくなったサイトでも、まずは中身の確認から対応します

「何から確認すればいいかわからない」という段階でも大丈夫です。代表エンジニアが直接、状況を伺います。

よくある質問

AIを使ったサイバー攻撃は、小さな会社のホームページも狙われますか?

はい、狙われる可能性が高まっています。AIを使うと攻撃者は少ない手間で多くのサイトを休まず調べられるため、会社の規模ではなく入りやすいかどうかで相手を選び、小さな会社のホームページも「たまたま見つかった弱いサイト」として標的になりえます。

2026年10月には、どんなAIによる攻撃が報告されましたか?

GMOサイバーセキュリティ byイエラエは2026年10月19日、日本企業を狙った不正アクセスの攻撃元で、AIが自動で侵入を試みるツール「ARTEX」の使用を確認したと発表しました。また、クラウド型WAF「Scutum」を提供するビットフォレストは10月14日、AIエージェントが国内企業のWebサイトにスキャン、ログインの総当たり、問い合わせフォームへの連続投稿などを行っていたと報告しています。

WAFを入れていれば、WordPressなどを更新しなくても大丈夫ですか?

いいえ、WAFだけに頼るのは危険です。イエラエは今回の攻撃でWAFをすり抜ける複数の技術が使われていたと説明し、WAFがあるからパッチを後回しにしてよいと考えるのは要注意だと警告しています。WAFは更新の代わりではなく、CMSやプラグインを更新したうえで重ねる守りです。

ホームページの守りは、まず何から始めればよいですか?

最優先は、WordPressなどのCMS・プラグイン・テーマ・PHPを最新版に更新すること、管理画面に2段階認証を設定してパスワードの使い回しをやめること、使っていないサイト・プラグイン・アカウントを削除することです。続いて、管理画面へのアクセス制限、問い合わせフォームのボット対策、サーバーとは別の場所へのバックアップを進めます。

不正アクセスの形跡を見つけたら、どうすればよいですか?

ログやファイルを消さずに保存し、セキュリティ事故として速やかに対応を始めます。IPAは、異常なログや身に覚えのないアカウントが見つかった場合は専門の会社への調査依頼を検討するよう案内しており、慌てて消してしまうと調査ができなくなります。

参考情報